VDT作業者の健康管理
目が見えることと疲れの関係
(財)高知県総合保健協会 医師 平井 学
ほとんどの企業でコンピューターを用いる作業が増え、多くのひとが画面を見
ながら作業をするVDT作業に従事していると思われます。VDT作業は50cm
前方を固視するもので、視力としても中距離となり常に調節力を用いて眼に緊張
を強いることになります。従って、裸眼矯正ともいわゆるよい視力の場合が疲労
をためやすいといえます。図1に5m視力と50cm視力の関係を示していますが、
5m視力が0.6未満でも50cm視力の案外保たれている人も多く2/3はVDT
作業に支障ない人々です。むしろ近視傾向のほうが、VDT作業に向いていると
もいえます。
一方、矯正状態で5m視力が1.2以上のいわゆるいい視力にしている人々の
50cm視力はどうでしょうか。図2に5m視力1.2以上の個々の眼について、各
年齢階級別の50cm視力平均値(±標準偏差)を示しました。45〜49歳0.9±
0.2、50〜54歳0.5±0.2、55歳〜0.4±0.3といったように50cm視
力は45歳以降低下傾向を示し、加齢とともに近くを見る為の調節力が落ちてくる
のが原因です(老視)。45歳以降は、矯正によりむしろ老視症状を増強させている
例が多く、矯正度数を弱めることにより50cm視力は充分となる例も多く見受けら
れます。また、調節力の維持されている若年者の場合は50cm視力の不足を認めな
くとも視力低下感とともに眼の疲労を訴える人が少なくありません。
パソコンの前に座ると思わず1〜2時間休みなしの方も多いのですが、本来
眼の集中持続時間の限界が20分程度と言われていますから、1時間に2〜3回程
度、遠くをみるなどして日の緊張をとる工夫が必要です。作業中に、少し視線
をそらすと見えるような位置に絵やポスター等を飾ってみるのも作業環境の改
善策とみなされます。また、窓や電灯の映り込みや画面およぴ周囲の明るさ(グ
レア)が多いと極めて眼が疲れやすくなります。画面の配置や向きを変えるだけ
で、対処可能な場合もありますし、窓にブラインドもしくは遮光性のカーテンを
つける必要があります。
画面を見上げる姿勢は、眼裂(まぶたとまぶたの問)が大きく広がり乾燥しや
すいうえ、集中すると瞬きの回数が減ることもありますますその傾向が強まりま
す。いわゆるドライアイの状態ですが、眼の疲労感を増強する原因のひとつで
す。花粉やほこりが長く付着した状態になる為、アレルギー反応がでやすくなる
とも言われています。作業後およぴ合間に目薬の使用をおすすめします。今回、
VDT作業にとっての良い視力と職場環境の改善策について述べましたが、みな
さんひとりひとりが、自分自身の視力や作業環境にまず関心を持つことが改善の
第一歩と思われます。
|